春期企画展「幕末人の心象」を開催中です。
幕末に生きた人物は自身の心情を漢詩や和歌で表しました。
それらは「遺墨」として珍重されています。
「遺墨」を見ると、世の中に対する危機感や自らの信条を訴えるもの、家族との別れに涙し、恋しい人に思いをはせるなど〈人間〉としての感情があらわれています。
また、筆跡も、のどかな風景や恋しい人への想いを詠んだものは繊細で流麗な筆遣いで、自らの信条や高揚する気分を詠んだものは堂々とした筆遣いで、愚痴をぶつけたものは荒々しい筆遣いになるなど、様々な感情が表現されています。掛け軸や短冊に書かれた文字の形にも注目して、作者の心の内を想像してみてください。
今回の企画展は、当館が所蔵する史料から、幕末期に活動した人物の遺墨42点を展示します。
個性豊かな筆跡、和歌や漢詩の内容から、幕末人も一人の〈人間〉として、様々な感情をもちながら生きてきたことに思いをはせてください。
岩倉具視 短冊
自身に起こった出来事は危機ともなるし、好機ともなるという意味の和歌。
大久保利通 書
明治7年(1874)、台湾出兵後の視察のおりに詠んだ漢詩。日本の国威が世界に輝くようにという願いを込めた内容の漢詩。
維新七卿短冊
文久三年(1863)八月十八日の政変で長州へ向かった三条実美ら七人の公家が詠んだ和歌。右から1つ目の三条実美の短冊は、明治23年(1890)第一回帝国議会開院式で、国民のために精一杯務めよという激励を詠んだ和歌。